ゲストハウスプレスー日本の旅の、あたらしいかたち。

 

2013〜2018年の5年間をざっくり振り返るーニッポンゲストハウス考 #04

すっかりごぶさただったゲストハウスコラムなので、執筆リハビリも兼ねて、まずはざっくりとこの5年間のゲストハウスを取り巻く状況などを振り返ってみたいと思います。

この5年で「日本の観光業」全体の注目度が飛躍的に上がった

2013年 ゲストハウスプレススタート 2020年東京オリンピック開催決定
2014年 アジア諸国への大幅訪日ビザ緩和進む 外国人旅行者の日本入国者数が1,000万人を突破
2015年 インバウンドという言葉が一般的に使われはじめる。Airbnb普及元年?
2016年〜 古いオフィスビルをコンバージョンした大型ホステル増加&地方都市に古民家改修型のゲストハウスが続々登場

2015年以降の変化の特徴に関しては、エビデンスをもう少ししっかり取る必要がありますが、実感としては上記のような出来事があったように思います。

この数年間で、海外からの渡航者が3倍以上に増え、(大阪はなんとこの数年で7倍!になったとか)当初は「中国人旅行者の爆買い団体旅行客」みたいなステレオタイプな報道が多かったニュースも、最近は、Airbnbなどの民泊、インバウンド、地方創生、その他さまざまな切り口で観光業にスポットが当たるようになりました。

この5年全体として、ゲストハウスや宿泊といった小さいジャンルだけでなく、観光サービス業(運輸通信も含む)全般の世間からの注目度が飛躍的に上がったように思います。

古ビル・古民家リノベーション型だけでなく新築のゲストハウスも増えました
古ビル・古民家リノベーション型だけでなく新築のゲストハウスも増えました

ゲストハウス・ホステルも激増。

わたしは5年間、日本のゲストハウスに着目し、あちこち視察を兼ねて自費で泊まり、取材を重ねてきました。最近はアジアを中心に海外のゲストハウス・ホステル事情も観察がてら訪ね歩いています。

ゲストハウスに誰が泊まっているのか?
宿によって、また地方によって割合は違いますが、特徴として「外国人観光客の受け入れを当初から想定している」ことが多く、結果的に、外国人旅行者の比率が高い宿が多くあります。人によっては「海外の人しか泊まれない」と勘違いしていることも。(そんなこと絶対ないです!誰でも泊まれます)

東京や京都・大阪、札幌などの大都市・有名観光地でまず増えはじめたゲストハウスですが、その流れは地方都市にも波及していきます。
2011年、東日本大震災の後、価値観が変わり、都会暮らしをやめて地方に移住する人も増えました。その流れとあわせるかのように、地方でゲストハウスやカフェを立ち上げる人も増えていきます。

地方創生ブーム?によって、地域おこし協力隊が激増し、その隊員が地方で起業する手段として「ゲストハウス」を考えつくというパターンも結構多い印象です。そんなこんなで、気がつけばあちらこちらで「素泊まりの宿」ゲストハウスが増えたのがこの5年です。統計的にゲストハウス・ホステル(名称もそれぞれ統一されてない)は、「簡易宿業」または「旅館業」に入るのですが、その中には「民宿」「ペンション」も含まれるので、この5年で、海外からのゲストも想定した「ゲストハウス」が純粋にどれだけ増えたかは正直誰もわからない、というのが現状です。

数年前は全国で700軒くらいはあるかなーなんて話をしたことがありますが、今や予約サイトの「ホステル・ゲストハウス」って地方都市ひとつで入れるだけで何百と出てくるので、全然わからん!めっちゃ増えてる!!というのだけがわかります。

カフェ・バー併設のゲストハウスも多い
カフェ・バー併設のゲストハウスも多い

Airbnb他民泊サービスも一般化

個人的に、日本人は何かしらその現象に「名前」がついたとたんに普及が早くなる傾向があるなと思うことがあるのですが、その最たる例がエアビーことAirbnbを「民泊」サービスと言うようになったこと。

「民泊」とは 民泊制度ポータルサイト

「民泊」についての法令上の明確な定義はありませんが、住宅(戸建住宅やマンションなどの共同住宅等)の全部又は一部を活用して、旅行者等に宿泊サービスを提供することを指して、「民泊」ということが一般的です。ここ数年、インターネットを通じて空き室を短期で貸したい人と宿泊を希望する旅行者とをマッチングするビジネスが世界各国で展開されており、急速に増加しています。

ということで、明確な定義もなく誰が言うようになったのか、はっきりとはわかりませんが、おそらく2015年あたりからAirbnbのサービスも日本で普及しはじめて、どんどん登録する人(企業)も増えたような印象があります。

簡易宿業という法律をしっかり守って営業しているゲストハウスにとって、設備投資なく単なる部屋をそのまま貸せるエアビーの存在は、長らく敵、とまではいかずとも、「ちょっともやもやする存在」でした。

今は、予約サイトのようなプラットフォームとしてAirbnbが使われることもあり、ゲストハウスの部屋をAirbnbで貸し出している宿も結構あります。良し悪しは別にして、今後日本では民泊新法というのが施行されるので、いろいろ状況も変わっていくでしょう。(この辺りはとてもややこしい法律の問題が絡むので今は割愛)

古ビル・古民家リノベーション型だけでなく新築のゲストハウスも増えました
古ビル・古民家リノベーション型だけでなく新築のゲストハウスも増えました

2020年東京オリンピックを控え、これから日本の観光業はどうなる?

個人的には、「オリンピックはあんまりこのブームと関係ないのかも」と思っています。つまり、2020年を越えても、外国人観光客はワラワラとものすごい勢いで日本に来まくるだろうという予想です。

ゲストハウスも全国どこでも、まだまだ新規開業が増えるでしょうし、そして人知れずクローズする宿も出てくるでしょう。その理由についてはまた次回以降で!

こちらは香港のホステル。海外の安宿事情もかなり変わってきています
こちらは香港のホステル。海外の安宿事情もかなり変わってきています
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西村祐子 / ゲストハウスプレス編集長  : 「好きなことをして生きる」を実践するべく活動するライフクリエイター。2017年より神奈川の海辺から大阪にUターン。現在はあたらしい旅と暮らしの発信基地Wanderers!の運営をはじめ、 旅にまつわるさまざまな事業プロデュースを行っている。http://moanablue.com/life