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ニッポンゲストハウス考 #01 ゲストハウスの魅力とは?

ニッポンゲストハウス考#01  ゲストハウスの魅力とは?

今、日本ではゲストハウスと呼ばれる宿泊施設が若者を中心に密かな人気を集めています。知っている人は知っていて、知らない人は全然知らないゲストハウスという存在。特にここ数年、都市や観光地を中心に従来の「安宿」ではない魅力を持ったゲストハウスが次々と開業しています。第1回目のニッポンゲストハウス考は、ここ数年のゲストハウスの人気の理由とその魅力とは何か?を、ちょっと真面目に考察していきます。

まず、ゲストハウスの魅力とは何か?を論じる前に、ここで言うゲストハウスの定義を再度確認しておく必要があるようです。というのも、そもそもこのゲストハウスという言葉が、今もまだ様々な用途で使われているからです。

例えば、ガーデンチャペルのような、小さな結婚式場のことを「ゲストハウス」と呼ぶものもありますし、今、人気のシェアハウスと同様の意味で使われることもあります。(シェアハウスについては後述) さらに、ゲストハウスと同義語で使われる用語として「ホステル」「ドミトリー」「バックパッカーズ」などがあり、用語以外にその差は特にありません。

ゲストハウスプレスで呼称する「ゲストハウス」とは、基本素泊まりで、トイレやシャワーなどの水まわりが共同、主に1泊から数週間宿泊できる比較的安価な宿のことを指しています。

ゲストハウスの特徴

その特徴としては、ドミトリー(相部屋)形式の部屋があったり、共有のシャワースペースやトイレなどは必要最低限のシンプルさ、また共同のラウンジやキッチンなどのスペースがあり、比較的、他の旅行者同士が交流しやすい雰囲気がある宿が多いことが挙げられます。

法律的には「簡易宿所」の分類で、大規模なゲストハウスでも100床前後、平均的には定員10〜30人程度の民家やビルを改造して営業しているところが多いようです。また、もともとこの「ゲストハウス」の形式が、外国人を中心に知られていたこともあり、利用者の外国人比率が多いということも、特徴のひとつに挙げられるでしょう。

シェアハウスとは違う?

似た用語で「シェアハウス」がありますが、こちらは1ヶ月以上の期間、「居住」する家としての機能を重視しています。居住者同士の交流が多いこと、キッチンやラウンジなどの共有スペースが多いことなど、ゲストハウスとの共通点も多いですし、人気の理由として共通する部分も多くあるように思いますが、ここでは、あくまで一時的な旅の拠点としてのゲストハウスのみを対象として、その魅力を考えてみたいと思います。

ゲストハウスの魅力とは何か?

 1.価格の安さ

ゲストハウスが何故今人気なのか?そのひとつとして大きいのはやはりリーズナブルな価格であることは重要なポイントでしょう。1泊2000〜3500円程度で、女性でも安心して泊まることができる宿泊施設は、日本では、ゲストハウスを置いて他にありません。(例えば都会のカプセルホテルは男性専用だったり繁華街のど真ん中で治安にやや不安がある場合も)

 

ですから、ゲストハウスというジャンルの宿泊施設を知らない人が、楽天トラベルやじゃらんといった通常ホテルや旅館を検索するサイトで格安の宿泊施設を探していたら、偶然ゲストハウスというジャンルの宿泊施設があることを知り、おっかなびっくり泊まってみたら結構よかった、というような出会い方をする人も多いようです。

 

しかし、価格だけがその魅力かというと、もちろんそうではありません。人気のあるゲストハウスは、何か他にその場所に所用があって、その宿泊施設としてゲストハウスを選ぶのではなくて、そのゲストハウスに泊まりたいからわざわざそこに行く、というリピーター客が数多くいます。それは価格や利便性とはかけ離れた価値観です。では、それは何なのでしょうか?

2. 安価でも落ちないサービスの質

ゲストハウスは、安価で寝場所を提供する小規模な施設が多いですが、値段が安いからと言ってサービスレベルが落ちるかというと、そうではありません。むしろ、こんなに安くて、ここまで気遣いしてくれるんですか?と思えるような、心のこもったサービス対応をするゲストハウスが多くあり、そういう宿がやはりリピーターの多いゲストハウスとして知られています。

 

現在、人気が出ているゲストハウスは、経営者も20〜40代と若く、スタッフとして働いているのも主に若者が中心です。しかも、そこにいるのはアルバイトや社員(賃金が発生する)ではなく、フリーアコモデーション(住む場所を提供するかわりに報酬なしで働くスタイル)方式で働いているスタッフも多くいます。賃金が発生する「バイト」ではなく、旅の途中、そのまま長期滞在して、結果ゲストハウスのスタッフになったという人や、ゲストハウスを将来経営したいと、修行の場としてそこを選んでいる人もいて、彼らの意識は、「お金」ではない別の価値観で動いているようにも思えます。

ゲストハウス若葉屋
ホトリニテ

ゲストハウスのスタッフは、その宿の雰囲気や他のスタッフやオーナーの接客態度を見て感じ取った上で「働きたい」と思っているからか、またはオーナーの教育がしっかりしているからなのか、(おそらく両方)いわゆる「やる気のない」「杓子定規な」対応をするスタッフが非常に少ないのです。若者はマニュアル通りにしか動かない、と決めつけている人にはおそらく驚くであろう対応かもしれません。

 

大げさな経費をかけず、古い建物を自分たちでリノベーションしたりして工夫している宿が多いため、人気の宿は、掃除も行き届いていて清潔感があります。スタッフが本当によく働いているな、というのがそうしたゲストハウスの印象ですし、実際本当にそうなのだと思います。おそらくそれは、今人気のゲストハウスは個人経営の宿が多く、または強いオーナーシップを持った経営者が運営していて、彼らの「ゲストハウス」に対する思いの強さが、スタッフにもうまく反映しているからではないかと思われます。

 

また、共有スペースにある備品なども、ちょっと気が利いた雑貨屋に置いてあるようなかわいい容器に入れ替えられていたり、まるで高級旅館のように毎日のように花が活け変えられていたりと、そのサービスの質を考えると、コストパフォーマンスがよく、時には、これなら高級ホテルなんていらないかもな、と思えるほどで、その傾向は、特に女性オーナーの宿に特徴的です。

3.デザイン性(オシャレ!かっこいい!)

廉価でもデザイン性の高い小さなホテルやホステルが海外で増えており、その傾向が日本でも見られます。

 

若い感性のゲストハウスオーナーが、DIYで自分たちで改装したり、感性豊かな若い空間設計デザイナーと共同で自分たちの好きなようにセンスを発揮して作った空間や、京都や浅草など、外国人の目を特に意識した「古きよき日本」を演出した宿など、各宿が、少ない予算の中でも、空間デザインに手を抜かず、「自分たちが心地いい居場所」「カフェのような雰囲気」を創りだそうとしています。

 

また、そのゲストハウスの作りに感銘を受けた旅人が、「自分にも出来るかもしれない」と、その例を参考に、古い家をリノベーションして開業する、という流れもあります。 また、ゲストハウスだけではなく、カフェやバーを併設している宿も多く、宿だけではないトータルでのデザイン性、魅力を発信していることも、人気の要素でしょう。

4.外国人旅行者との触れ合い、インターナショナルな雰囲気

もともと海外からの旅行者に人気、また、もともとゲストハウスの形態が発展していったのは東南アジアなどの諸外国だったこともあり、海外からの旅行者も数多く利用しています。ゲストハウスによっては外国人比率が8割以上というところもあります。もちろん、英語での情報を出していない宿には外国人は少ないなど、その差はありますが、日本にいながら外国人旅行者との触れ合いが多く、インターナショナルで、カジュアルな雰囲気があります。

 

ラウンジや共同キッチンなどの共有スペースがあり、そこで旅の情報交換や会話が生まれる空気感があったり、宿が毎週のように、鍋パーティーや◯◯ナイトと称したイベントを行うことで、国籍を問わず誰でも仲良くなれるような仕掛けを用意しているところもあります。

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5.その地方と旅人とを繋ぐ旅のコンシェルジュとしての魅力

ゲストハウスは、観光地を中心に日本各地に点在していますが、それぞれの地方・地元との結びつきが強い傾向があります。ゲストハウスは、基本的には素泊まりであることが多いため、必然的に近所の食事処の情報を提供したり、地元のお勧めポイントなどを教えたりすることが多く、結果的に地域のハブのような存在になっていくからです。

 

場所によっては、「泊まらないけどちょっと寄る」地域のコミュニティの役割をゲストハウスが担っていることもあり、そのことが、ガイドブックにはない「あまり知られていない」「よりタイムリーな」地域の情報を提供する、優れた旅のコンシェルジュになることを可能にしています。 ゲストがそうした情報を元に、地元に「お金を落とす」ことで、ゲストハウス自体の信頼感も上がっていく、というような好循環を生んでいます。

 

また、各宿には、情報交換用のノートが置いてあったり、他の全国各地のゲストハウスのパンフレットや、地元のイベント案内のチラシやフリーペーパーなどが置かれるスペースがあったりと、様々な工夫で、旅をする人にとって有益な情報をきめ細かく提供しています。ビジネスホテルでは、こうした案内は通り一遍のものになりがちですし、高級ホテルでのコンシェルジュ並の、またはそれ以上のその地域のコアな情報があることも、ゲストハウス滞在の魅力のひとつではないかと考えられます。

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西村祐子 / ゲストハウスプレス編集長  : 「好きなことをして生きる」を実践するべく活動しているライフクリエイター。2017年より12年続けた海辺のボディセラピーサロン経営からライフチェンジ、大阪を拠点に旅にまつわるさまざまな事業プロデュースを行う予定。http://moanablue.com/life